2011年8月21日日曜日

思い出への旅:カブトムシ

これも小学校3年生の時のことである。

この年頃の男の子にとってカブトムシというのは魅力的なものであり、私にとっても例外ではなかった。
誰に聞いたのかは記憶いないが、桜ヶ池にはカブトムシがいっぱいいるという話を聞いた。
(桜ヶ池というのは家から12~3キロほどの所にある小さな池で、メジャーではないが、「お櫃納め」という珍しい神事で有名で、秋に行われるこの神事は、毎年地元のテレビでも放送される)

早速近所に住む同級生3人でそこにカブトムシを捕りに行こうということになった。カブトムシを捕るのは朝早い方がよいということで、できるだけ早く出発することにした。
交通手段は軽便鉄道である。
今はもちろん廃線になって、当時を知る者でなければその形跡さえもわからないが、その頃はこの地域に住む人たちの大切な足であった。

10数キロの距離であるが1時間近くかかったような気がする。

やっと桜ヶ池の停留所(駅)についたが、池まではまだ歩かなければならなかった。池と言いながら小高い山の上にあるのだ。
10分程歩いて、やっと池にたどり着くとさっそくカブトムシ探しを始めた。池の周りの藪の中を這い回るようにして、やっとひとり2~3匹ずつのカブトムシを捕まえることができた。
いっぱいというほどではないが、十分満足できる成果だった。

遊び疲れて、家から持ってきたおむすびをほおばったところでそろそろ帰ろうということになった。
朝降りた停留所にもどったが、つぎの便はいつ来るか分からない。もしかすると今日はもう来ないのかもしれない。なんといっても1日に数便しか走らない超ローカルな軽便鉄道である。

待っていても仕方がないので歩くことにした。が、どこをどう歩いたらいいのかも分からない。
線路の上を歩いていけば間違いなく着けるはずだということになり、朝来た方向に向かって歩き出した。
しかし、いくら歩いても前方には同じような線路が延びているだけで、これで家に帰り着けるのだろうかと不安になった。逆の方向に歩いているのではないかとも思った。
不安にかられながらも歩き続けていると、遠くに高く伸びた松の木が見えた。(海だと思った)無意識のうちに足早になっていた・・・海が見えた!これで帰り着けると思った。
まだ、全行程の半分も来ていないが、ここから先は見慣れた海の景色を見ながらの道である。まちがいなく帰り着けるという確信があった。

辺りが薄暗くなった頃町の家並みが見えてきた。
やっと線路からはずれて見知った通りに出ると、両側の家々には灯りが点っていた。

こんなに遅くまで何をしていたのかという家族に、カブトムシが入った虫籠を誇らしげにさしだした。




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