戦死したことになっていた兄が不意に帰ってきた。
兄とはずいぶん年が離れており、兄と別れたときに幼かった主人公は、その兄のことはあまりよくは知らない。
家には兄が使っていたファーストミットがあり、野球をしていたようだが、ある時からパタリとボールをさわらなくなった。
他の兄たちに理由を聞いても、誰も何も言わなかった。
もどってきた兄に誘われて、初めて兄とキャッチボールをしたが、それを最後に兄は寝込んでしまった。重い肺結核だった。
そんなある日、学校で行われた野球の練習試合を見に行くと、家で寝たきりのはずの兄が人混みの中で試合を見ていた。
しかし、その兄は1回表の守備が終わったときにはいなくなっていた。
まもなく兄は死んだ。
野球部に寄付してあった兄のファーストミットは、野球部に新しい道具が揃ったところで、兄の形見に返してもらった。
その帰りに長く学校で働いている老人に出会い、兄の話を聞かせてもらった。
あと1アウトで甲子園初出場という場面で、名一塁手といわれた兄が三塁手の送球をはじいて逆転負けしてしまった。
(兄は死ぬ前に自分のファーストミットが三塁手のボールをしっかり捕球するのを見届けに来たのか・・・?)
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